電子書籍の印税について あんな事やこんな事

仕事

書籍は電子で買って紙でも買っちゃう☆らむこです

2016年に現れた問題ありありな とある村。

大手出版社はじめ至るところで問題になってたこちらの村の記憶も新しいかと思います。

現在では、スマホやタブレットの普及によりクレジット決済・キャリア決済等も整い、電子書籍に対してのハードルはかなり下がりました。

全国出版協会の出版市場調査によると、2018年の紙出版物の販売金額は14年連続で下降しているそうです。

それに対し、電子出版は年々上昇しています。

とは言っても、紙+電子のトータルは年々下がっているので、出版業界全体が下降傾向になっているのが現状です。

どの電子書店で買うのが作家さんの為になるの?

この記事を書こうと思ったきっかけが、

作家さんを応援するの、電子書籍だとどこで買うのがいいのかな~?

という友人の一言から。

紙の本だと、いろんなところで『作家印税10%』というのをよく聞くと思います。

(実際、この10%っていうのも一律じゃないし出版社や作家さんによって変動します)

でも、電子書籍ってどうなの?

って話ですよね。

ぶっちゃけ、出版社ごとにピンキリです。

書籍の流通のしくみ

まず先に、紙の書籍がどういう流れで書店に置かれるのか。をザックリと説明したいと思います。

紙の書籍って、ほぼ『取次』を通して全国の流通に乗ってるのですが、その7割を日販とトーハンが占めています。

このうち2社でシェアの70%以上を占めるといわれるトーハンと日販が二大取次と呼ばれる。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

紙の書籍は現物があるので、現物を全国の書店に届けなければなりません。

書籍を作るのは出版社ですが、その出版社が自社の書籍を置いてくれる全国の書店に直接受注・発送・営業を行うのは…ちょっと難しいですよね?

なので、間に『出版取次』と呼ばれる業者を挟み、出版社はこの取次に書籍を卸し、全国の書店へ流してもらうという仕組みがあります。

勿論、この取次は無料で行われるわけではありません。

取次業者も商売なので、手数料として書籍の売上から幾らか差し引かれるというわけです。

業界でよく言われてる割合。簡単に書くとこんな感じ▲

500円の書籍を1冊販売した場合、上記のような割合で分配されることが多いです(作家印税を10%としています)

こんな感じで、出版社には、

売価から取次が持ってく手数料+書店の取り分を引いた分

が入ります。

作家さんと契約時に『印税は販売価格の10%』としていた場合、500円の10%=50円を支払うので、出版社に残る金額は300円となります。

紙の書籍の場合、作家さんに入るお金はこのような計算になりますが、ぶっちゃけ実売数で印税計算をするよりも、刷り部数で計算されることが多いので取次や書店がどれだけの料率か、ってあまり関係ないことが多いです(あくまで作家さんの印税として)

出版社としては取次の料率が低ければその分取り分が多くなるので、ここの数字が関係してきますが、今回は『作家さんの為になるには?』の話なので深く突っ込みません。

電子書籍の印税って?

上記で、紙書籍の場合の作家さんに入る印税の分け方を説明しましたが、電子配信となるとどうなのでしょうか?

前項で『取次』の説明を行いましたが、電子書籍はこの『取次』という仕組みは存在はするのですが、出版社のうまみが少ないです。

紙書籍の場合、

  • 全国の書店に配本してくれる
  • 在庫管理をしてくれる
  • 出版し取次に卸した段階で仮払金が支払われる

という、うまみがありますよね。

しかし電子書籍は現物が存在せず、販売するのはデータとなります。配本の手間もありませんし、お金が発生するのも実際にデータが売れた時のみです。もちろん現物を販売するわけではないので在庫管理も必要ありません。

また、電子書籍を販売している電子書店は、紙の書籍を販売する書店(リアル書店)に比べて数も少ないですしね。

このことから、取次を通す意味があまりないのです。

(稀に、書店に直接卸すより取次を通した料率の方が高い場合があるので、その場合は取次を通した方がうまいです)



電子取次の会社もありますし、そちらを利用した方が電子書籍データを各電子書店に卸す手間は省けるのは事実です。

ただ、取次よりも電子書店に直接卸す方がうまみが大きい為、電子書店と直接取引 (直取) する出版社が多いのが現状です。

取次を通すと、

取次にデータを卸すだけで複数の書店で販売してくれる
→納品の手間が少ない【メリット】

書店Cのように直接取引した場合に対し、取次手数料を引かれてしまう
→出版社に入ってくるお金が少ない【デメリット】

出版社としては実入りが大きい方が良いので、書籍データ納品の手間があれど、取次を通さず直取をするというのも理解できるかと思います。

このことから、出版社と電子書店の直取を前提として話を進めます。

電子書籍の売上の配分

電子書店で書籍が売れた場合、その売り上げは、

  • 作家さん
  • 出版社
  • 電子書店

の3つに配分されます。

電子書籍の作家印税は、2019年7月現在、大きく分けて

  • 売価の〇%
  • 出版社に入った分の〇%

の2種類があります。

『売価の〇%』は紙書籍と同じ感じなので、説明不要かと思います。

問題は下の『出版社に入った分の〇%』

これ、とっても曖昧だと思いませんか?

私は、初めてきいた時に「え?なにそれ?」って思いました。

でもこれ電子書籍ならではって感じなのですが、紙の書籍って売価が決まってますよね。定価として。

そして紙書籍は、基本的に値引きはありません。

(消費税率が変わらない限り)売価がきっちりと決まっているんです。

しかし、電子書籍は売価の変動があります。電子書籍を買われる方だと分かると思うのですが、よく

『1話無料!』や『今だけ半額!』なんてキャンペーン見ませんか?

はい。そうです。こういったキャンペーンがあると売値が変動してしまうのです。

1ヶ月ごとに作家さんに支払う印税を計算しようとした際に、月の中で売価が違うとややこしいですよね?なので出版社は『出版社に入った分の〇%』にしたがるのかな?と思っていました。


また、電子書籍は割引キャンペーンの実施の際、その負担は出版社が持つのがほとんどです。

どういうことか?というと、

いつもは500円で販売していた作品が半額キャンペーンで250円で販売する場合、1冊売れてもいつもの金額より250円少なくなるのですが、この250円の補填てないんですね。

電子書店で半額キャンペーン実施してるから、その250円は書店が払ってくれると思うじゃん?

そういうの無いから。

なので、作家印税を『売価の〇%』って設定しちゃうと作家さんが損した感じにもなりかねないんですよねぇ…。
(値引きしたことによって通常時の倍以上売れたら作家さんの実入りも大きくなるのですが、それが100%値引きによってなのか証明できませんしね)

だから電子書籍は『出版社に入った分の〇% 』って契約がそこそこあるのかなって思ってます。

出版社に入った分の〇%が作家印税の図

そして、電子書店で販売した際の分配先、作家さん、出版社ともう1つが『電子書店』です。

はい。この電子書店の取り分が

電子書店によってめっちゃバラバラ

これね。数字は出せないのですが見るとマジでビビると思います。

は?そんなに電子書店取ってんの?

って感じですよ。

しかも料率は書店ごとに一律ではありません。出版社によっても変わります。

この辺が直取ならでは、って感じですよね。大手3社は料率高め(出版社に入る料率です)というのも有名な話です。


話を戻します。

電子書籍を購入する際に、作家さんが多くお金が入る書店はどこ?

という問いに対して、

作家印税が『出版社に入った分の〇%』の場合、

結論:
電子書店の取り分が少ない書店で購入するのが良い

ってことになります。

ただ、出版社料率が良い電子書店を調べる。なんてことは中の人じゃなきゃ難しいですし、現実的ではないのですよね…。

電子書籍の配信に仕事で携わった時に、書店ごとの料率揃えてよって思いましたし、こんなにも差があるってことにも驚きました。

出版業界全体が下降しているってこの状況なので、この辺りでテコ入れしてって思います(他力本願)

余談

電子書籍の印税について簡単に説明しましたが、書店の取り分が多い状態が今後も続くと小さな出版社はどんどん厳しくなるのでは?と思ってしまいます。

私、会社に属していた時から謎なんですが、書店によってなんでこんなにバラバラなんでしょうね?

この事って、最近では、オリジナル同人をやられてる方(主に男性向けコミック)が自分で電子書店に卸したりもしてるので、そういう方は知っていると思いますが、ほとんどの方は知らないと思います。

興味がある方は、個人で卸せる電子書店に卸してみると料率の違いが目に見えて分かるので調べてみると面白いかと思います。

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